「アスベスト」を使用した建物の解体工事：流れや注意点

アスベストを含む建物の解体は、一般的な解体工事と大きく異なる点があるため、注意深い対応が求められます。

本記事では、解体アスベスト工事全体の流れや工法、費用、そして業者選定時のポイントなどを詳しく解説します。

この記事を読むことで、アスベストの解体工事に関する正しい知識と注意点を把握し、安心してリフォームや建て替えが計画できるようになるでしょう。

解体アスベスト工事の基本を理解しよう

アスベストを含む建物に関する工事は、一般的な解体と比べて厳格なルールや安全対策が必要とされています。

ここでは、アスベストそのものの概要や健康リスク、また解体アスベストに関連する法規制について簡潔に確認しておきます。

アスベストとは何か

アスベストは、かつて建材として幅広く使用されていた鉱物繊維の総称です。

耐熱性や耐摩耗性に優れ、付着性を高めるために吹き付け材として利用されるなど、多彩なメリットを持つ素材でした。

しかし、継続的に吸入すると肺がんや悪性中皮腫などを引き起こすリスクがあると指摘され、現在は製造や使用が原則禁止されています。

特に1970年代以前に建築された建物には、高濃度のアスベストが含有されているケースがあるといわれています。

解体時に飛散性が高いアスベストを扱う場合、法令に従った手順での除去が義務付けられています。

アスベストの有無を調べる際は、有資格者による専門的な調査が重要です。

アスベストの健康リスク

アスベストを長期間吸い込むと、数十年後に肺関連の疾病が生じる可能性があるといわれています。

代表的な疾患には、アスベスト肺や肺がん、悪性中皮腫が挙げられます。

これらの病気は潜伏期間が長く、症状が顕在化したときには重症化しているケースが少なくありません。

微量でも吸い込むリスクを避けるため、除去作業中や解体工事では適切な防護対策が不可欠です。

防護服や防塵マスク（P3フィルター搭載）の使用、作業区域の隔離養生などが推奨されています。

また、工事関係者だけでなく、周辺住民への飛散リスクを最小限に抑えることも大切です。

解体アスベストの法規制

アスベスト使用建材の解体を行う場合、労働安全衛生法や大気汚染防止法など、さまざまな法令の規定を遵守しなければなりません。

特に、解体アスベスト工事を行う施工業者は、所定の許可を取得し、専門の技術や設備を備えている必要があります。

また、2023年10月からはアスベストの事前調査が義務化されており、調査結果を都道府県や保健所に報告しなければならないケースもあるようです。

アスベストを含む部分を除去する際の作業計画書や、飛散防止のための具体的措置などを示す書類の提出も求められます。

違反すると罰則を受ける可能性もあるため、解体アスベストにおける法規制の把握は大変重要です。

解体アスベスト工事の流れ

アスベストを含む建物の解体は、一般の解体工事より手間やコストがかかります。

その大きな理由は、事前調査や許可取得、飛散防止措置など、厳格なステップを踏む必要があるためです。

事前調査と取り扱い許可

解体アスベスト工事の第一歩は、建物にアスベストが含まれているかどうかを確認する事前調査です。

この調査は法令で定められた有資格者が行う必要があり、目視やサンプリング検査などが実施されます。

もしアスベスト含有が判明した場合は、行政機関への届出や必要な許可を取得する流れになります。

許可申請の際は、除去作業の方法や作業期間、担当技術者の資格情報などを細かく記載した書類を提出します。

こうした手続きを経ることで、法令遵守と安全管理を徹底した工事が可能となるのです。

事前準備を怠るとトラブルの原因にもなり得るため、慎重な計画が大切です。

アスベストの除去と飛散防止

次のステップは、実際にアスベストを含む建材を除去し、周囲への粉じん飛散を防ぐ工程です。

まずは作業区域を隔離し、負圧隔離装置や集塵機などを設置して外部への漏れを防止します。

除去作業では、はつり機やディスクグラインダーなどを使用するときに大量の粉じんが発生しやすいため、水や薬剤で湿潤化を行いながら削り取ることが一般的です。

作業員は防護服や専用マスクを着用し、厳重な安全対策を講じたうえで除去にあたります。

除去したアスベスト含有物は封じ込め容器に入れ、法律で定められた方法で廃棄する必要があります。

飛散防止措置を疎かにすると、周辺住民や作業員自身の健康被害リスクが高まると考えられます。

解体後の処理と点検

アスベストの除去が完了したら、建物本体の解体を行います。

この段階では、飛散性の高いアスベストはすでに取り除かれているため、通常の解体作業が中心となります。

ただし、解体後にも飛散防止のために養生シートを撤去せず、粉じんの拡散を最小限にとどめる工夫が続けられます。

最終的には立ち会い検査による点検が行われ、アスベストが残存していないかの確認を受けます。

必要に応じて健康診断や作業報告書の提出が求められることもあり、ここまでが大まかな工事全体の流れです。

後片付けや廃材処理を含め、解体がすべて完了するまでには十分な時間を要します。

解体アスベスト工事の方法と工法

解体アスベスト工事では、アスベストを「除去」するだけでなく、「封じ込め」や「囲い込み」といった工法が選択されることもあります。

建物の状況や費用、将来の再利用を考慮しながら最適な工法を検討することが重要です。

除去工法の種類

アスベストを完全に取り除く除去工法には、いくつかの方法があります。

代表的なのはリムーバル工法と呼ばれるもので、はつり機や研磨機を使って下地ごと削り落とし、再度暴露するリスクを低減します。

粉じんが大量に発生するおそれがあるため、飛散防止対策は非常に厳格に行われるのが特徴です。

薬剤を染み込ませて表面を軟化させる剥離工法や、高圧水を噴射して削ぎ落とすウォータージェット工法も存在します。

いずれの工法を選ぶ場合も、熟練の技術と機材が求められます。

除去工法を選択するとアスベストそのものを取り除けるため、将来的にリフォームする際の不安要素が減る点がメリットです。

封じ込め工法と囲い込み工法

アスベストを取り除かず、特殊な薬剤で固めたり、壁や天井などに纏わせて飛散しづらくするのが封じ込め工法です。

コストが抑えられることが多い一方、将来的に大規模なリフォームを行う際には再度アスベストの取り扱いが必要になる可能性があるといわれます。

囲い込み工法は、アスベストを含む部分を新しい壁材などで覆う方法です。

施工が比較的容易であり、短期間で終わる場合もあるため、高層ビルなど広範囲のアスベストを扱う際に採用されることもあります。

ただし、アスベスト自体が残存する点には注意が必要です。

作業に必要な安全対策

アスベスト工事の安全対策は、労働者と周辺地域への影響を最小限にするための重要なテーマです。

基本的には次のような対策が講じられます。

特に粉じんの飛散を防ぐ湿潤処理は、どの工法でもほぼ必須とされています。

また、作業終了後には監督者がエリアをチェックし、アスベストの残存がないかを確認します。

安全管理の徹底が、不測のリスクを防ぐ鍵といえるでしょう。

解体アスベスト工事の費用と注意点

解体アスベスト工事は、専門性の高さと厳格な法令遵守が求められるため、通常の解体より費用が高くなる傾向があります。

そのため、事前に複数業者から見積もりを取り、詳細を比較・検討することが大切です。

費用相場と見積もりポイント

アスベストのレベル（飛散性の高さ）や施工面積、採用する工法などによって費用幅は大きく変動するといわれます。

たとえば、レベル1（もっとも飛散性が高い）アスベストを除去する場合、1㎡あたり数万円以上かかることもあるようです。

逆に飛散性が低いレベル3であれば、平米単価は比較的抑えられるかもしれません。

見積もりを確認する際は、養生費や廃材処理費などの項目まで細かく記載されているか要チェックです。

不明瞭な追加料金の有無をクリアにすることで、後のトラブル予防に役立ちます。

複数社の見積もりを比較することで、適正価格を把握しやすくなるでしょう。

補助金と助成制度の活用

一部の自治体では、飛散性の高いアスベストを除去する際に補助金や助成金を利用できるケースがあります。

対象となる建物の要件や工事内容が細かく規定されていることも多いので、事前に自治体の窓口に相談するのがおすすめです。

補助金の申請を行う場合は、必ず工事着工前に手続きすることが求められる場合があります。

特に、工事後に申請しても補助の対象とならない可能性があるため、タイミングには注意が必要です。

こうした制度を活用することで、工事費用を大幅に抑えられる場合があります。

解体アスベスト工事を安く抑える方法

解体アスベスト工事の費用を抑える方法としては、分離発注や相見積もりの取得などが挙げられます。

分離発注とは、建物の解体とアスベスト除去を別々の業者に分けて依頼する手法で、中間マージンを減らせる可能性があります。

また、複数業者への見積もり依頼を行い、それぞれの費用内訳を比較することで、サービス内容や価格設定の差を見極めやすくなるでしょう。

さらに、自治体独自の助成金がある地域もあるため、積極的に情報を収集することが重要です。

ただし、極端に安い見積もりは安全管理や技術面が不十分であるリスクも否定できません。

解体アスベスト工事の業者選定と準備

解体アスベスト工事では、信頼できる専門業者を選ぶことが成功のカギとなります。

同時に、発注者側でも準備しておくべきことがいくつか存在し、工事をスムーズに進めるための要点をまとめます。

専門業者の選び方

アスベスト除去の許可や資格を持っているかは、業者選定時の最重要ポイントです。

さらに、過去の実績やレビューを確認し、実際の解体アスベスト工事経験が豊富かどうかも見極めましょう。

工事期間や費用についても明確に提示できるか、質問への回答が丁寧かなど、コミュニケーション能力も大切な要素です。

行政に登録されている専門業者であることはもちろん、万一のトラブルに対応できる保険に加入しているかどうかを確認しておくと安心です。

契約の前には、スケジュールやアフターサービスについてもしっかり打ち合わせをしておきましょう。

専門業者が法律や安全基準をきちんと理解しているかどうかが、工事の成否を左右すると考えられます。

工事前に行うべき準備

アスベスト工事に着手する前には、近隣住民へのあいさつや作業スケジュールの周知が欠かせません。

騒音や粉じん、車両の出入りなどが想定されるため、周囲とのトラブルを避けるためにも事前の説明が重要です。

また、施主側で対応可能な範囲としては、建物の中の私物整理や電気・ガス・水道などのライフライン停止手続きなどがあります。

アスベスト工事は突発的な変更が生じやすいため、余裕を持ったスケジュールを組むことが望ましいとされています。

行政への届出書類や工事計画書を求められるケースもあるため、必要書類の準備を業者と連携しながら進めましょう。

こうした前準備をしっかり行うことで、工事当日の混乱を大幅に減らせます。

アスベスト工事の進め方と近隣対応

工事がスタートしたら、まずは作業エリアを隔離し、粉じんが拡散しないように養生を行います。

騒音や振動が発生する場合もあるため、あらかじめ近隣にチラシや回覧板で工事期間を通知しておくと良いでしょう。

飛散防止のため、足場周りにシートを張りめぐらせるなど、見た目にも大がかりな工事になる場合があります。

作業途中でトラブルが発生したら、業者だけでなく施主も迅速に対応を検討し、適切な連絡を行うことが求められます。

また、定期的な工事報告を受け取り、進捗を把握することも大切です。

近隣住民の理解や協力を得るために、工事前後の清掃や騒音管理には特に配慮しましょう。

まとめ

解体アスベスト工事は、健康や環境リスクを最小限に抑えるために厳格な手順が必要とされます。

事前調査から除去工法の選定、飛散防止対策、法規制の遵守まで、通常の解体以上に専門知識と技術が重要です。

また、費用を抑えるためには補助金や助成制度の活用、複数業者からの相見積もりなどが有効とされています。

信頼できる専門業者を選び、スケジュールや工事内容を十分話し合ったうえで着工に臨むことが大切です。

近隣や行政への対応をしっかり行い、安全な環境を維持しながら工事を進めましょう。